かゆいってとにかく不快…でも、かゆいところをかくと気持ちが良いですよね。
しかし「かく」ということは、肌にとって大切なバリア機能を破壊する行為。繰り返しかき続けることで徐々に肌がもろくなり、わずかなかゆみも刺激として捉えてしまうようになります。
これではかゆみのループ状態に。
そして恐ろしいことに、肌への刺激も、かゆみも、すべて黒ずみを招く要因。とくに汗をかきやすく皮膚が弱い脇では、かゆみが原因で黒ずみが生じやすいのです。
今回の記事では、脇の黒ずみを招くかゆみの原因と、かゆみを黒ずみにしないためのケア、黒ずみができてしまった場合の対処法について詳しくお話します。
炎症を繰り返す脇のかゆみの原因
一口にかゆみと言っても原因はさまざま。
汗をかきやすく皮膚が弱い脇のかゆみは、炎症が原因であったり、炎症を伴う場合が多くあります。適切に処置しなければ、慢性的に繰り返す場合も。
まずは、かゆみが続く場合にまず疑うべき原因をいくつか解説していきます。ご自身の症状とあてはまるものはありませんか?チェックしてみてくださいね。
独特の不快なかゆみ…アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを引き起こすことで知られる代表的な皮膚疾患です。
アトピー性皮膚炎になると、皮膚表面は強い乾燥状態となり肌のバリア機能は著しく低下。そこにアレルゲンが接触することでかゆみや炎症を起こします。
アレルゲンの接触以外にも、ストレスや外気温、発汗などさまざまな要因が重なって症状を引き起こします。
アトピー性皮膚炎特有のかゆみ
- 赤みのある湿疹
- ぶつぶつした湿疹
- 水分の多いじゅくじゅくの湿疹
などが挙げられ、かき壊しにより肌が厚くなってごわつき、ターンオーバーの乱れにもつながります。
- 良くなったり悪くなったりを繰り返す
- 特定の物質との接触で症状が起こる
- 家族にアトピー性皮膚炎の方がいる
といった場合には、アトピー性皮膚炎によるかゆみを疑いましょう。
避けて通れない悩み…カミソリ負け
脇毛の自己処理によるカミソリ負けも、脇のかゆみや炎症を起こす要因のひとつ。
肌というのは、一見なめらかに見えても表面には細かな隆起があるため、カミソリが隆起に接触することで肌が傷つき、痛みや出血を引き起こします。
また、カミソリはムダ毛と一緒に皮膚表面の角質をそぎ落とします。
肌にとって重要な保湿やバリア機能をもつ角質を失うと、肌は非常に敏感な状態に。
自己処理後、充分な保湿ケアを行わずに放置したり、熱い湯につかったり、刺激のあるローションを使用することで肌を痛めつけ、かゆみやヒリヒリ感を引き起こします。
これらの刺激はすべて、黒ずみの原因であるメラニン色素を生み出す要因。肌にとって、そして黒ずみケアにとって乾燥は大敵です。
ついつい使いすぎてない?制汗剤によるかゆみ
汗をかきやすい脇にとって、制汗剤は心強い味方。ですが、使いすぎるとかゆみや炎症を引き起こすことがあります。
そもそも制汗剤は、脇にある汗腺をふさいだり、汗腺のはたらきを抑えることで、汗の分泌を抑えるのが役割。しかし、汗腺が常にふさがれていたり、汗の分泌が極端に少なくなると、肌が乾燥しかゆみを引き起こしてしまうのです。
さらに、汗や皮脂の分泌によるニキビの発生を防ぐべく、制汗剤には殺菌成分が含まれていることがあります。そのため制汗剤を使いすぎると、脇の衛生を保つために必要な常在菌も殺してしまうため、肌トラブルを起こしやすい状態になります。
つまり、使いすぎは要注意ということですね。
脇はとくに要注意!汗あれ
脇のように、皮膚が重なっていて汗が溜まりやすい場所は「汗あれ」に要注意です。
汗あれとは、簡単にいうと摩擦により肌がすりむけた状態のこと。汗で湿った肌が、肌あるいは衣服と擦れることにより赤く、薄くなり、ついにはかゆみや炎症を起こしてしまいます。
汗あれは、肌に小さな傷口が生じている状態です。汗あれ状態の肌でさらに汗をかくと、汗に含まれる塩分が傷口に入り込み、ぴりぴりした痛みを伴います。
また、皮膚がすりむけている状態は微生物が繁殖しやすく、感染症などのトラブルを招く可能性もあるので要注意です。
汗をたっぷりかいていても起こる!乾燥肌
先ほどもお話しましたが、肌の乾燥はかゆみを引き起こします。
肌は本来、皮脂や角質といった保湿力のある組織やバリア機能によって守られているのですが、乾燥肌というのは守ってくれるはずの皮脂が不足したり、角質がはがれ落ちてしまった状態。
湿疹ができるとターンオーバーが早くなり、乾燥はますます進みます。角質が正常な周期で剥がれ落ちない状態が続き、充分なバリア機能をもたない未熟な角質が生まれ、肌表面は弱くもろい状態に陥ります。
乾燥した肌ではわずかな刺激をも「かゆみ」として捉えてしまうというのはすでにお話しましたね。
かゆみと乾燥は関連が深いもの。悪循環に陥るとなかなか脱出できません。
病院で診てもらうべき!心配な脇のかゆみ
脇にかゆみを引き起こす原因はまだまだあります。ここからは、疑いがあればすぐに病院へ行き適切な処置を受ける必要があるかゆみについてお話します。
経過観察して良いかゆみなのか、それともすぐに病院へ行ってみてもらうべきかゆみなのか、判断する指標にしてくださいね。
あくまで指標ですので、少しでも異常を感じる場合はきちんと病院で診てもらうのがベストです。
原因はカビ!脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、身体のなかでもとくに皮脂の分泌が多い場所で起こる皮膚炎です。脇も皮脂の分泌が多く、脂漏性皮膚炎にかかるリスクが高い場所。
脂漏性皮膚炎の症状は、赤みのある炎症や強いかゆみ、肌荒れやそれに伴うかさつきなどが挙げられ、一見するとアトピー性皮膚炎と似た症状を起こします。
気を付けなければならないのは、脂漏性皮膚炎の原因が「カビの一種(真菌)」だということ。
放置していると慢性化しやすく、かゆみとの戦いが続きます。かゆみや炎症を繰り返すことで脇はどんどん黒ずみ、肌のごわつきをも引き起こし美肌とは程遠い状態に。
原因がはっきりしているため、適切な治療を受ければ早く良くなる可能性があります。当てはまる症状でお悩みの方は病院で診察を受けましょう。
実は全身で起こる皮膚疾患…カンジダ
脇やデリケートゾーンのように、皮膚と皮膚がこすれあう場所で生じやすいのが「カンジダ」です。
カンジダと聞くと性感染症のイメージが強い方も多いかもしれませんが、全身で起こり得る皮膚病です。
カンジダは高温多湿の状況で繁殖しやすいカビであり、汗や衣服によるムレが原因で、脇もカンジダによるかゆみや炎症を起こす場合があります。
治療には抗真菌薬が必要であり、放置していては治りません。肌にとって快適な環境を整える工夫も必要です。
また、糖尿病にかかっている人や免疫機能が低下しているときにもカンジダは繁殖しやすいため、何らかの病気にかかっていないか確認してもらうことも重要です。
眠れないほどのかゆみ…疥癬(かいせん)
もっとも感染力が高く、注意すべきなのが疥癬。疥癬虫というダニが寄生することで生じる病気です。
疥癬には2種の病型があります。
比較的感染力の弱い「通常疥癬」であっても、他者に触れることはもちろん、同じタオルの併用もNG。
感染力が非常に高い「角化型疥癬」では、症状が落ち着くまでの一定期間、患者を隔離する必要があるほど。
かゆみが極端に強く、眠れないほどのかゆみを生じる場合は疥癬の疑いもあるため受診をおすすめします。
また、家族に疥癬患者がいる場合や、ステロイド剤が効果を示さない場合も疥癬を疑います。
疥癬は特徴的な症状を示すので、医師がみれば必ず診断をつけることができますし、正しい処置を受ければ短期間で治ります。
強いかゆみを感じたら、怖がらずに病院を受診しましょう。
脇のかゆみを放置していると黒ずみになる⁉
脇のかゆみを「一時的なもの」と自己判断して放置していると、あとになって後悔することもあります。
かゆみをもたらす炎症や、「かく」という行為、肌が荒れることによるかさつきなど、かゆみには「黒ずみ」につながる要因がいくつも隠されているのです。
かゆみを放置することでなぜ黒ずみになるのか?その理由をまとめてみました。
かきすぎで黒ずむ!炎症・刺激は黒ずみの大敵
かいてはいけないと分かっていながら、かゆくてたまらないとついつい手が伸びてしまう…かゆみは恐ろしいものです。
起きているときはかかないよう我慢できても、寝ているときに無意識にかきむしっている場合もありますよね。
かくことで脇に刺激を与えると、刺激から肌を守るべくメラニン色素が過剰に分泌します。このメラニン色素が脇の黒ずみのおもな原因。
「かゆい」「かく」という刺激、かくことによる摩擦や傷、これらはすべてメラニン色素を過剰分泌させます。かゆみを放置し繰り返すことで、脇の黒ずみリスクはどんどん高くなります。
乾燥状態ではターンオーバーが滞る
乾燥した肌ではターンオーバーが滞り、色素沈着を起こしやすくなります。
ターンオーバーとは「角質層の代謝」のこと。
肌のもっとも表層にある角質層が古くなると自然に剥がれ落ち、新しく健康な肌へと生まれ変わる仕組みを指します。
乾燥状態の肌は、角質を落とす力が極端に低下しています。肌に栄養が届いていないかさついた肌では、正常なターンオーバーが行われないのです。
通常、ターンオーバーは1か月ほどの周期で行われ、メラニン色素もそれに伴い剥がれ落ちていきます。しかし乾燥肌ではターンオーバーに3か月ほどかかる場合もあり、その間ずっとメラニン色素は蓄積し続けます。
かゆみには保湿ケアが欠かせない
脇のかゆみを黒ずみにしないためには、かゆみの原因を根本から解決することが大切です。
先述したように、脇のかゆみの原因の多くには「乾燥」が関係しています。
アトピー性皮膚炎やカミソリ負けでは炎症と乾燥が同時に生じていたり、炎症ののち乾燥を起こすケースが多くあります。
汗をかく場所だからといって保湿を怠らないようにしましょう。脇には保湿ケアが欠かせません。
脂漏性皮膚炎やカンジダのようにカビやダニが原因である場合は、それらを撃退するための薬が必要です。
ここは自己判断ではなく、きちんと医師の処方を受けることをおすすめします。
脱毛に行くなら炎症を治してから!
脱毛は、肌への刺激が強い行為。サロンでの脱毛後は、炎症やかゆみを引き起こさないよう細心の注意を払ってアフタースキンケアを行います。
それほど肌に負担のある脱毛ですから、すでに炎症やかゆみがある場合には行えない場合があります。
また光脱毛やレーザー脱毛は、脇の黒ずみが濃い場合や日焼けがある場合もNG。
敏感肌の方やすでに黒ずみが生じている方は、サロンへ行く前にきちんと医師のもとで許可を得てから脱毛を行うのがベストです。
サロンでの脱毛は、万全のアフターケアに加え「光脱毛」を行うことによる美肌効果も期待できます。自己処理の回数を減らすこともできるため、脇の肌トラブルや黒ずみの悩みを抱えている方にとってはむしろおすすめ。
ただし、万全の状態で受けましょう、ということです。
脇の黒ずみ&かゆみ改善のためにできること
脇のかゆみや、かゆみが続くことにより生じる黒ずみを改善・予防するにはどうすれば良いのでしょうか。
「脇」という場所の特徴や、黒ずみを招く原因などを踏まえ、今すぐ始められるセルフケアをご紹介します。
ひとつひとつは簡単なものですが、すべての対策をしっかり行えば、かゆみや黒ずみをしっかり改善することができるはずですよ。
夏場は脇の汗や火照り対策が必須
汗をかきやすい夏場は、とにかくこまめに汗を拭き取ることが大切です。また、汗をかきにくい方は火照りや蒸れにも要注意。
こういった高温多湿の環境では、汗の出口がふさがれることで正常に排出されず、周囲の組織を刺激しかゆみを引き起こすことがあります。
風通しの良い衣服を着用するといった工夫を行いましょう。汗をしっかり排出できるよう、基礎代謝を整える生活を意識するのも大切ですね。
かゆみ・黒ずみ対策にはとにかく保湿ケアが大事
かゆみ、黒ずみのいずれの対策にも欠かせないのが保湿ケアです。
肌が乾燥していると、些細な刺激をかゆみと認識します。
また、乾燥した肌はかくことによって傷ついたり炎症を起こす可能性が高く、これらはもれなく黒ずみの原因となります。
保湿をしっかり行うことでターンオーバーも正常化し、黒ずみの原因となるメラニン色素の排出も促進できるため、かゆみ・黒ずみの予防、対策として保湿は最重要といえるでしょう。
脇にも紫外線対策を!炎症と黒ずみを対策しよう
紫外線は肌にとって強い刺激です。
日焼けを想像してみましょう。日に焼けたあと、肌がヒリヒリとし、のちにくすみや黒ずみが残った経験はありませんか。
日焼けこそ、紫外線が原因で起こる炎症と黒ずみの代表的な存在です。
メラニン色素は全身で作られる物質ですから、全身の日焼け対策はもちろん必須です。しかし、脇はとくにメラニン色素が分泌されやすい部分。念入りな紫外線対策が必要です。
紫外線対策は季節を問わず行うことが理想ですね。
脇の自己処理を見直す!なるべく低刺激で行おう
カミソリ負けによるかゆみや毛嚢炎(ニキビ)をはじめ、刺激そのものがかゆみ黒ずみの原因となる脇毛の自己処理。
- 毛抜きは使わない(毛穴や皮膚を傷つけ、炎症を起こす)
- カミソリは新しいものを使用する(古いものは切れ味が悪く、肌を傷つける)
- 道具や手は清潔にして処理を行う(ばい菌が入ると炎症を起こす可能性も)
- 抑毛クリームを使うことで自己処理の回数を減らす
- 電気シェーバーを使う(皮膚に直接触れず、毛穴から毛を引き抜かないなど安全)
といった工夫をおすすめします。
また、少しでも皮膚や毛穴への負担を減らすために大切なのは処理前後のケア。
処理前には温めることで毛穴を広げ、処理後はしっかりと冷やしたのち保湿を行いましょう。
脇以外も!肌に影響を与える習慣を見直してかゆみのケアを
かゆみは、脇だけではなく全身のケアが必要。身体のどこかにかゆみがあれば、いずれ脇にもかゆみが生じる可能性があります。
一度かゆみを感じると、身体はどんどんかゆみに敏感になります。
本来かゆみを引き起こさないような些細な刺激にも敏感になりますし、かくことが快感になるとかゆくない場所にも手が伸びてしまうこともあります。
肌に影響を与える生活習慣を見直すことで、かゆみから身を守りましょう。
刺激が少ない素材の服を選ぶ
アクリル、ナイロンといった素材は、かゆみのある肌に着用するには不向きです。
これらの化学繊維は皮膚の水分を奪ったり、摩擦による刺激を引き起こす可能性があります。
直に肌に触れないよう、低刺激である木綿素材の衣服を着た上で着用するといった工夫をしましょう。
しかし、重ね着をし過ぎると高温多湿の環境を招くため季節に応じた服装を心がけてください。
どうしても直接肌に触れる下着類は、素材にこだわりたいですね。シームレスタイプ(縫い目、つなぎ目のないもの)もおすすめです。
汗あれの場合は綿素材を避けて
かゆみの原因が汗あれである場合は、綿素材の衣服は避けたほうが良いでしょう。
湿気を閉じ込めてしまい、蒸れやすい環境を作り出す可能性があります。
汗あれによるかゆみがある場合には、ポリエステルのような吸収性の高くない合成繊維で作られた衣服の着用がおすすめ。
縫い目も刺激になるため、シームレスタイプを選ぶとなお良いでしょう。ゆったりとしたサイズを選び、脇で摩擦が起こらないよう配慮してください。
かゆみを引き起こす生活習慣を見直そう
かゆいところをかいてしまうと、肌のバリア機能が低下し乾燥とかゆみの悪循環に陥ります。
かゆい時には、かかずに冷やすことでかゆみを落ち着けましょう。皮膚を傷つけないことが改善への第一歩です。
長風呂の習慣がある方、熱いお湯につかることが好きな方も要注意。熱いお湯や長風呂は、身体にとって大切な皮脂を奪ってしまいます。
また、入浴前後の温度変化もかゆみを生じやすいため、身体をあたためすぎるこれらの行為は好ましくありません。
お風呂でのゴシゴシ洗いもやめましょう。
かゆみの対策には、ストレスをためないことも重要です。
ストレスは刺激に対し過敏になったり肌のターンオーバーを乱すばかりでなく、「かく」ことが無意識のストレス発散になり、クセになる場合があります。
脇のかゆみは放置しないで対策を!早めのケアで黒ずみを予防・改善しよう
黒ずみにつながる脇のかゆみには、さまざまな原因が隠されています。黒ずみになってしまってからでは、ケアに時間もかかりますし、元通りキレイになるとは言い切れません。
我慢できないほどのかゆみや、アトが残ってしまう前に、しっかりとかゆみ対策を行うことが脇のケアにとって大切です。
かゆみが続く場合には、なんらかの皮膚疾患や感染症、アレルギーが隠されている可能性もあります。
セルフケアでどうにもならないかゆみがある場合には、すぐに病院でみてもらいましょう。
かゆみも黒ずみも、早め早めのケアを行うことで必ず解消できますよ。
この記事のまとめ
- 脇のかゆみは黒ずみにつながる
- かゆみケア、黒ずみケアには保湿が重要
- 乾燥状態では正常なターンオーバーが行われず、肌トラブルが解決しない
- 衣服の工夫やこまめな汗の拭き取りなど、生活習慣を工夫することでかゆみの改善も
- 菌やダニが原因のかゆみは病院へ行くべき。かゆみがおさまらない場合も病院へ